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鎌倉の漂着海藻を飼料として飼育する「鎌倉海草ポーク(仮)」試食会を実施。実用化へ第1歩

記事公開日:2018/12/05

この記事のテーマ:取材日記・鎌倉


海岸に漂着した海草を飼料として利用し、新しいブランド豚を育てる試みが、鎌倉で進められている。
企画発案者は料理教室「鎌倉ダイニング」主宰の矢野ふき子さん。
2018年11月13日(火)には第1回の試食会が開催された。

鎌倉の海岸には過去17年間、年平均で約3,100トンもの海藻が漂着。
自然の産物とはいえそのまま放置していると腐敗して悪臭や虫の発生の要因になってしまうため、神奈川県と鎌倉市で費用を折半し、海岸に埋めて処理をしているのだという。

鎌倉海藻ポーク 試食会

矢野さん(上写真右)は鎌倉漁業協同組合の食品アドバイザー、神奈川県6次産業化サポートセンター企画推進員も務めている。

地元の「食」と「海」に深くかかわる中で、本来なら廃棄処理をしなければならない海藻を何か違う形で活用することはできないかと考え、「飼料」にすることを思い立った矢野さんは、まずは協力者探しから活動を開始。
県の畜産技術センターの紹介で厚木市の養豚農家臼井欽一さん(上写真左)を紹介してもらい、同氏と共同での新たなブランド豚「鎌倉海藻ポーク(仮)」の開発が始まったという。

今回、試食会に提供されたのは、臼井さんが漂着海草を飼料に配合して飼育した「中ヨークシャー」という品種の豚。高座豚と同じ品種で、濃厚でキメの細かい赤身と脂の甘みが特徴とか。

乾燥した海藻

漂着海草は食用や肥料などにもなる「カジメ」という海藻が殆どで、飼料にすることで豊富なミネラルにより豚の味わいを良くする効果が期待されるという。(上写真=粉砕、乾燥した漂着海草。粉砕・乾燥の設備はルミネ大船店が提供)

鎌倉海藻ポーク 官能検査

試食会では海藻を与えていない同品種の肉も用意され、「A」と「B」の番号を振ってどちらが海藻入りの飼料を与えた肉か伏せた状態で来場者に提供、食感、味、香りなどをアンケート形式で回答してもらう「官能検査」が実施された。

鎌倉海藻ポーク 官能検査中 鎌倉海藻ポークのしゃぶしゃぶ アカモクポン酢だれ

「本日の試食会は第一歩。品種、育て方などは今回のテストの結果も踏まえ、今後更に模索をしていきたい。海藻が飼料に適していることは以前から知っていましたが、処分しなければならないものを大事な”海の恵み”として活用するアイデアが素晴らしいと思いました。
『鎌倉の海』と『神奈川の豚』。県内でこれ以上無い組み合わせですよね(笑) ぜひ新たな名産品として育てていきたいと願っています」(臼井さん)

飼料となる海藻は矢野さんの呼びかけにより、鎌倉漁協の漁師の協力で回収されているほか、障がいのある方たちに回収作業を行ってもらい、収入に替える仕組みづくりも進められている。
試食会では、障がい者の方から臼井さんへ、集めた海藻の進呈式も執り行われた。

海藻の進呈式

「地元の皆様のご協力があって、本日の試食会を迎えることができました。飼料とする海藻を集めることも1つの課題でしたが、ハンディキャップのある方々が一生懸命、その助けになってくれています。
今後、鎌倉海藻ポーク(仮)がハンディキャップのある方々の働き甲斐と収入を生み出すことはもちろん、そのおいしさは彼らなくしては成り立たないということを広く知っていただくことで、普段ハンディキャップのある方々とはあまり関わりのない人たちとの距離も縮まっていって欲しいと思っています」(矢野さん)

矢野さんは、「例えば、鎌倉市民の方がボランティアとして海岸にある海藻を拾い、福祉事業所に持ち込んで障害のある方のお仕事を支援する、など、食文化を通じて人と人が繋がる”架け橋”としていきたい」と構想を進めているという。

「鎌倉海藻ポーク(仮)」はまだ仮称。官能検査後にはブランド名のアンケートも採られた。
神奈川県が誇る新たなブランド豚としての名称が冠されて、売り場に並ぶその日を心待ちにしたい。