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【とこ湘Blog】読書日記その4 夢のトラウマコンビ再び!「オオカミの時間: 今そこにある不思議集」

投稿日:2020年10月20日
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こんにちは! とことこ湘南編集部Yです。
私も大食い大好きなんですよね!(先週Tさんのブログより) 私は「女王」より「大食い王」派、今となっては海外遠征は難しくなってしまったけどやっぱり世界選手権で一度はアメリカに勝って欲しい、モリーってまだ現役なのかな?派です。

さて、以前こちらのスタッフブログに長年「凄いものを読んだ…」と思っていた本「おとうさんがいっぱい」について書かせていただいたのですが(その時の様子はコチラ)、その際いろいろと調べながら書いていると、何と同書の作者・三田村信行さんと挿絵・佐々木マキさんのコンビが今年3月、実に45年ぶりの短編集を発行したという情報を目にしました。

それがこちら「オオカミの時間:今そこにある不思議集」(理論社発行)です。

「おとうさんがいっぱい」は児童書でありながら、「ある日突然お父さんお母さんと二度と会えなくなったら?」「家に帰れなくなったら?」というような子供が漠然と恐怖を覚えていそうな悪夢を緊張感ある話運びで展開し、殆どの場合特に救いの無いまま話を終えるという非常にエクストリームな短編集で、大した考えも無しに「“おとうさんがいっぱい”? おもしろそう!(^_^)v」と手に取ったこども(私)を夏休みの間中懊悩させるという破壊力を持った作品でした。

それから45年の時を経た本作はどうだったかと申しますと、1つひとつの話のボリューム、空気感、ジャンルに幅のある、バラエティ豊かなつくりになっていました。
非常に静かで落ち着いた、とても読みやすい文章の運び方は共通しているのですが、ちょっと不思議で温かい読後感の「われたお面」「恐竜の木」、無常感溢れる「歯抜け団地」「魔法使いの木」、物語の中心となる一丁の拳銃が冷たい存在感を放つ連作など、作品によっては三田村さん独特の毒気や突き放したハードボイルドさがあるのですが「おとうさんが~」ほどの不条理な恐怖は姿を潜めているように思いました。
「おとうさんが~」は傑作ですが、恐怖譚としての完成度が高すぎて子どもが読むと「何でこんな話を読んでしまったんだ…」と思い悩んだり、留守番が怖くなったり、眠れぬ夜を過ごしたりという副作用が発生するかもしれません。(それを乗り越えるのが成長につながるかとは思いますが…タイミングも大事だし難しいところです。せめて小学校高学年位からがいいかも?)
その点「オオカミの~」はそこまでの劇薬ではなく、それでいてそうした話で三田村さんが伝えたかったことが更にはっきりと物語に表れているように感じました。

個人的に特に印象に残ったのが表題作の「オオカミの時間」で、これは本当にちょっと凄い話でした。

 

あらすじ:先生や親といった周囲の大人たちの、本人らは何の気なしに発した言葉で少しずつ追い詰められ、不登校児になってしまった少年が主人公。
彼はオオカミを象ったゴム製のマスクを被り自己を消すことで自分とそれ以外の世界を遮断し、久しぶりに外出をする。
道行く中ですれ違う、彼に心無い言葉を発した大人たちも、ぎょっとするだけで彼が誰なのかは気が付かない。
そうして目的地も決めないままに山手線に乗り込んだ彼が目にしたのは――。

 

結論を言ってしまうと彼は自分の意思で、再び登校をすることを決意します。
この結論を導き出した理由が「誰かの一言」や「学校に希望を見出したから」等の、こちらの想像とまったく異なる壮絶なものなのです。
「少なくとも、逃げ続けて何も知らないままよりはいい」というような。
「人生は、自分で決めて自分で進むんだ」
当たり前のことではありますが、昨今こうした「突き放す優しさ」を持った作品は珍しいように思います。
末尾の中短編「最後の王様」はファンタジー要素とSF要素のある話なのですが、「おとうさんが~」収録の「かべは知っていた」にも近い(よりマイルドな?)読後感の作品で、やっぱり三田村さんの作品には通底して「いつか来る子どもからの脱却」がテーマにあるのかなと思いました。(歯抜け団地とかは違いますが…というかどうしろと!?と思う話もたくさんあります 笑 まだまだ研究が必要です)

ところでこの2名による短編集は実は他にも出ております。
45年ぶり、というのは理論社では、ということでしょうか? いずれにせよかなり昔の作品で、上記の2作以外は中々手に入りにくい状況です。
三田村さんはちょっと調べれば児童向け探偵小説から三国志まで膨大に作品が出てくる多作な方ですが、私は何しろ「おとうさんが~」で出会ってしまったので、学生時代お二人の不条理で怖い話ばかり探しては読んでいた時期がありました。(古本も高騰しているものが多いので、図書館で予約しては読んでいました。今から読んでみたい方にもオススメです)
「風を売る男」、「オオカミのゆめ、ぼくのゆめ」「オオカミがきた」等々…結構ハードコアな話も多く、完全にハマっていた私がその話をすると、とっくに成人している友人が「とてもじゃないが自分は読めない。やめてくれ」と聞くのを拒絶する事件も起きました。
でも復刊して欲しいなぁ…。好きな人はいっぱいいると思うんですよね。

時折作品に現れるオオカミ(佐々木マキさんの作品にも多いですよね)は、孤高の象徴なのかもしれません。
今回の「オオカミの時間」には三田村さんによるあとがきがあり、とっても興味深いのですが、その中に「おそらくは最後の短編集となるであろう~」という一節がありました。えっ何で! と驚いたのですが、末尾の著者紹介を見ると三田村さんは1939年生まれ、今年は81歳とのことで、体力的なこととかもあるのかも知れません。
作品を読んでいて年齢のことを意識したことがなかったので2度びっくり。作品が現代的で鮮烈であることと作者の年齢は関係ないし、驚くことも失礼かもしれませんがそれにしたってこんなに真摯に子供と向き合って、重たいメッセージも忌憚なく届ける話の数々には現役感しかなく、改めて素晴らしい作家さんだ! と感じ入りました。

同あとがきで「エッグタルトに手を出すな」のような”ハードボイルド幼年童話”(初耳のジャンル。間違いなくパイオニアでしょう)にはまた機会があれば挑戦したい…との一文もあるので、ぜひ今後の新作にも期待しつつ、本作もことあるごとに読み返していきたいと思います。

毎度毎度長いったらありゃしない…すみませんでした。

(Y)

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